昔々、越後の国のある町に金持ちの「権蔵」という呉服屋の若旦那が住んでいました。権蔵は親が残してくれたりっぱな店と家を持っていました。女房は「お千代」と言いました。それは、それは働き者でした。権蔵の両親は、今はすでにこの世の人ではありませんでした。権蔵は一人っ子で、両親にかわいがられて育てられました。権蔵とお千代の間には二人の子供がいました。商売もうまくいき、何の心配もなく暮らしていました。

 そんな幸せな毎日を送っていたある日のこと、町の居酒屋でひょんなことから「助蔵」という遊び人に声をかけられました。助蔵は「なんだ、呉服屋の若旦那さんじゃぁねぇけぇ。まあまあ、きょうは一緒に飲まねけぇ」と初対面なのになれなれしく言い寄ってきました。すると権蔵は「なんで俺のことを知っていっろうのう」と言いました。助蔵はすかさず「あんげ、金持ちの呉服屋さんだもの、おめさんを知らない人間はいねてぇねぇ。まぁ、これも何かの縁ですけ、きょうは飲まねけぇ」と言いました。権蔵はそんなことを言われていい気持ちになり、つい気を許し「一人で飲んでも面白くもなんともねっけぇ、一緒に飲もてぇねぇ」と言いました。すると助蔵は「さすが町一番の金持ちは話が分かんねぇ」と持ち上げました。ますますいい気持ちになった権蔵は「きょうの勘定は俺が持つっけぇ、いっぺぇ(たくさん)飲もてぇねぇ」と言いました。そして「おーい、酒をどんどんもってきてくんねっろっか」とその店の主人に頼みました。助蔵は「きょうのところはお言葉に甘えてごちそうになっれ」と言いました。すると二人は出てきた酒を飲み始めました。飲み始めてしばらくして権蔵は「ところで、おめさんなにしている人ろっかのー」と助蔵に聞いてきました。助蔵は「俺はただの遊び人だてねぇ。かおちゃんに食わせてもらっている風来坊だてぇねぇ」と言いました。権蔵は何の疑いも持たず「そうけぇ。楽でいいなぁ」と言いました。そんなことを言い合っているうちに酒がどんどん進み二人ともかなり酔っ払ってきました。

そんな状態のなかで助蔵が「ところで、若旦那さんは、さいころ賭博って知ってけぇ」と言いました。酔っていた権蔵は「丁半のことけぇ」と言いました。すると助蔵は「そうれぃ」と言いました。すかさず助蔵は「若旦那さん、たまには、羽目をはずしてもいいんじゃぁねぇけぇ。儲かっれぇ。ただし賭博はご法度なので内緒にたのむれ」と言いました。なんと助蔵は権蔵をご法度の、さいころ賭博に誘っていたのです。助蔵はさいころ賭博の胴元のやくざの親分の子分だったのです。もちろんいかさま賭博でした。それとは知らずに権蔵は「まだ生まれてこのかた、賭博というものはやったことがねっけぇ経験のためにやってみっかぁ」と酒の勢いもあって、つい言ってしまったのです。それを聞いていた助蔵は「それじぁ、さっそくあしたの夜、賭場の開帳があるっけぇ、ここで一杯ひっかけて賭場へご案内しますっけぇ。あしたの戌(いぬ)の刻にここで待ち合わせしょてぇねぇ」と言いました。すると権蔵は「分かったれ」と言いました。いかさま賭博とは分からない権蔵は助蔵の話に乗ってしまったのでした。そんな約束をした二人は、酒も進み、お互い酔っ払って居酒屋をあとにしました。助蔵は一人帰り道で「うまくいった。これで鴨が一人増えた。何の苦労もしてねぇあんな馬鹿な若旦那をだますことは簡単なことだ。ワッハァハァ・・・」と独り言をいって笑って帰りました。逆に権蔵はいかさま賭博に誘われたとは露知らず、経験したこともない賭博に心をうきうきさせて「あしたが楽しみだ」と独り言を言って帰りました。

 翌日二人は約束通り、ちょいと酒を引っ掛け、親分が胴元の賭場へ行きました。さいころ賭博は丁半の簡単なものです。何人か賭場にお客が来ていました。その日、権蔵はなんと50両ほどの大金を儲けました。胴元の親分と助蔵が組んでわざと儲けさせたのでした。権蔵はそんなこととは知らないで、帰り際助蔵に「助蔵さん、こんなに儲けて悪いねぇ」と言ったのです。助蔵はすぐに「いやいやぁ、権蔵さんは博才があっねぇ。たいしたものだ。どうです、あしたもここで開帳するんで、やってみねけぇ」と言ってきたのです。権蔵は「どっちみち夜は暇らっけぇ、また、くるっけぇ」と言って、いい気持ちで帰っていきました。翌日もまた儲かりました。遊びながら儲かるこんないいことがこの世にあったのかと権蔵は思いました。天にも昇る気持ちになってしまいました。権蔵は完全に舞い上がってしまったのです。次の日も誘われ又儲かりました。権蔵はとうとうこの賭博にはまってしまいました。助蔵と親分はそれが目的だったのです。なにせ、いかさまですから何でもできます。権蔵は、おお勝ちし、大金を手に入れていました。頭の中は丁半のさいころで支配されるようになりました。寝れば寝たで夢にまで出てくる始末です。権蔵は助蔵と親分の思う壺にはまってしまったのです。

 権蔵はさいころ賭博をやっていることは女房のお千代には秘密にしていました。賭場に行くときは適当な理由をつけては出かけていました。夜になると権蔵は落ち着きません。頭の中がさいころ賭博一色になり、いてもたってもいられません。自分がはめられていることに気付いていない権蔵は、きょうも出かけました。胴元の親分のところへ一直線です。きょうも勝つ気でいた権蔵でしたが負けが込んできました。それ以来、何回やっても勝つことができません。毎日毎日賭場へ通ったのですが勝つことができません。そのうちに今まで勝っていた手持ち資金と、店から持ち出した金が底を付いてしまいました。そしてとうとう親分から、自分の店と家を担保にし、借金までしてのめり込んでしまいました。助蔵は「権蔵さん、あんたは博才があるから必ず取り戻せっれ」などと適当なことを言われていました。権蔵は権蔵で最初に勝ったものですから博才があると信じています。どんどん親分から借金をしては、張っていったのです。そしてとうとうある日、のっぴきならぬところまで行ってしまいました。気が付いてみるともはや借金を返せないところまでいっていたのです。権蔵は親分に泣きつきましたが後の祭りです。とうとう権蔵は担保にしていた店と家を親分に取られてしまいました。助蔵と親分の罠にはまり、一文無しになってしまったのです。

 権蔵はこのことを女房のお千代に話しました。お千代はこんな馬鹿な亭主だったとは思わなかったと言って、二人の子供を連れてさっさと実家へ帰ってしまいました。身から出た錆とはいえ権蔵は天涯孤独になってしまったのです。そしてこの町から出て行き、隣の町の橋の下で暮らすようになりました。職もなく毎日ぶらぶらする日を送っていました。食い物は料理屋の残飯をあさって何とか食いつないでいました。

 あるとき権蔵は、あるお宮で参拝者が、さい銭箱にお金を入れるのを見ていました。そしてふと「ははあー。さい銭箱にはいくらかの金が入っている。それを寄せ集めれば何とか食っていけるかもしんねぇ」と考えたのです。そしてその日の夜からさい銭泥棒を始めたのです。やってみると以外とさい銭箱の中にお金が入っていました。権蔵は、さい銭箱からお金を盗むとき、必ず手を合わせ「神様、仏様。申し訳ありません。食えなくなってしまったのでこのさい銭箱の中のお金をもろっけぇ、勘弁してくんなせやぁ」と言っては盗んでいました。こんな生活をしばらくしていたのですが、もっと儲けたいと思い、泥棒する範囲を広げることにしました。かなり遠くまで足を延ばすようになりました。

 ある日の夜、権蔵はある村のお地蔵様のさい銭箱に気がつきました。そのお地蔵様は「まごころ地蔵」と言う名前が付いていました。このお地蔵様は人を改心させてくれるということで、このあたりでは有名なお地蔵様でした。そんなお地蔵様とはつゆ知らず、権蔵はそこのさい銭箱をゆすってみてびっくりしてしまいました。お金がたくさん入っていて動かないのです。権蔵は「しめしめ、こんなに金が入っているとは。いいところに当たったものだ。めったにあるものではねぇ。それにしても、見た目、てぇしたことのねぇお地蔵さんなのに、なんでこんなに、さい銭が多いんだ?? なんか特別なお地蔵さんなのかなぁ?」などと独り言をいいました。そしていつものように「神様、仏様、申し訳ありません。食えなくなってしまったので、このさい銭箱の中のお金をもろっけぇ、勘弁してくんなせぇやぁ」と言いました。そしてその中のお金をいつものように盗もうとしたそのとき、暗闇の中から「権蔵、権蔵」と自分の名前を呼ぶ声がするではありませんか。権蔵は何かの間違いではないかと思い、又お金を取ろうとしたそのとき、「権蔵、権蔵」とまた自分の名前を呼ぶ声が、暗闇の中から聞こえるではありませんか。権蔵は自分の耳を疑いました。「確か今、誰か俺を呼んだぞ。おーい! 誰かいるのか、いたら返事しろ!」と言って、あたりを見回しました。しかし、何の返事もありませんでした。あたりは静まり返っているだけです。そして「まさかお地蔵さんがしゃべるわけがないよなぁ。俺の名前を知っているはずもないよなぁ」と独り言をいって、又、金を盗もうとして、さい銭箱に手をつけたそのとき。「権蔵!! 盗む前に許しくださいと言っても勘弁できないぞ!! 私はここの地蔵だ。私の顔をまっすぐ見てみろ!!」という前より大きな声が確かに聞こえました。権蔵は慌てて、お地蔵様の方を見ました。そして、お地蔵様の慈愛に満ちた目が暗闇の中でカット見開き、その瞬間きらりと光りました。

それにはさすがの権蔵もびっくり仰天し「ウワァー! でででたー!!・・・」と大声を出し、あまりの恐ろしさに腰を抜かして地面にかがみ込んでしまいました。そしてしばらくの間、ただ茫然となってしまいました。しばらくして権蔵は「た、た、た、た、た、確かに、お、お、お、お、お、お地蔵様ろっかぁ」と、恐ろしさに震えながら、しどろもどろで聞き直しました。するとお地蔵様は「そうだ。私はここの地蔵だ。お前のことはよく知っている。確か、ご法度(はっと)のさいころ賭博に心を奪われ、店と家をなくして一文無しになり、女房子供にも見放され、天涯孤独になったのだよなぁ」と言いました。すると権蔵は腰を抜かして立てない状況の中で、いまだ半信半疑で「お地蔵様、ど、ど、どうしてそんなことまで知っていっろーのー。俺はさっぱり分からんてねぇ。もし本当にお地蔵様だったら、きょうのところは何とか勘弁してくんねぇろっかねぇ。ほんの出来心でやってしもたてぇねぇ。お許しを」と言いました。するとお地蔵様は「私はこの世におきているすべてのことは知っている。今、お前とこうして話しているのは夢でも幻でもないぞ。お前と何かの縁があったのだ。前置きはさておき、権蔵よ、いくら食えないからと言って人様のものを盗んでまでいい、と言うことはないぞ。みんな一生懸命働いて食っているのだぞ。自分だけ楽して、人様のものを盗んで儲けようとする心根が間違っているぞ」と優しく権蔵に語り掛けました。すると権蔵は「お地蔵様、言うては何ですが、今の世の中、不景気で働く場所もねっし、もし、働いたとしても条件のいいところもねぇてねぇ。こんげな世の中が悪いし、親の育て方も悪いっけぇ、俺はこんな人間になったんだ!!」と少し語気を強めて言いました。するとお地蔵様は「ほほおー。世の中が悪い、親が悪い、と、きたか。自分は悪くないのだなぁ。お前は両親の愛情を一身に受け、かわいがられて育てられ、何不自由なく育ったので、お前の心の中に甘えの心があるのだ。それがお前をだめにしている犯人の一人だ。そうではないか、権蔵」と言いました。

すると権蔵は「そうかもしんねてぇねぇ。生まれてこの方、苦労したことはねっけぇ、簡単に人を信用し、おだてられればすぐにその気になってしもたてねぇ」と言いました。するとお地蔵様は「お前もある程度は気が付いていたのだなぁ。しかし権蔵、ある程度では心の底から分かったとはいえないぞ。胸に手を当ててよーく考えてみろ。「俺がこうなったのは、すべて世の中が悪い、親が悪い、俺は悪くない」。と自分を正当化しているお前の心は間違ってるぞ。お前の心の中に、誘惑に簡単に負けてしまうもう一人の弱い自分がいるのだよ。これが今、お前をさい銭泥棒にしているもう一人の第二の犯人だぞ。お前の心の中では、ご法度の賭け事はいいことではないし、ましてや泥棒は悪いことだ、と分かっているはずだ。分かっているから、最初私が声をかけたとき謝ったのだよなぁ。しかし、分かっちゃいるけどやめられない、とくる。これはお前の心の力関係で、誘惑に負ける弱い心が勝っているからだ。ということは世の中が悪いということでもないし、親が悪いということでもない。お前自身が悪いということだ。そしてなぁ、権蔵、お前は本当のお金のありがたみが分かっていない。本当にお金のありがたみがわかっていれば安易に賭け事などにお金は使わないし、店と家を担保にして簡単にお金を借りることはしないぞ。お前が汗水流し苦労して作った店と家だったら、安易に賭博のために担保には入れられないはずだ。親から簡単にもらったからこんなことになったのではないのか。どうだ権蔵、これから心を入れ替えて、汗水流し働いて稼いでみてはどうだ。人間本当に苦労しなければお金のありがたみも分からないし、物事の本当のことも分からないぞ。人間は汗水流して苦労して得たお金だけが身に付くのだよ。賭博や泥棒をして簡単に得たお金というものは身に付かないのだよ。簡単に得た財産も同じく身につかないものだ。この世の中で遊びながら儲かるものなどないのだ。これらのことをこの機会によく考えてみたらどうだ」と言いました。

そのことを聞いていた権蔵は「そんなこと言ったってぇ、こんな弱い俺を生んだ親が悪い。ましてや、賭場を徹底的に取り締まらない世の中が悪い。俺はやっぱり悪くねぇ」と言いました。するとお地蔵様は「こんどは取り締まらない世の中が悪い、生んだ親が悪いときたか・・・。この罰当たりめがぁ!! まだ分からないのか権蔵!! 確かに世の中も悪い。それは認める。しかしなぁ、人間の歴史の中で、これがいい世の中だ、すばらしい世の中だ、という時代はあったのか? そんな時代などはなかったのだよ。ほとんど戦の歴史だよ。殺し合いの歴史だよ。どんな時代でも何らかの問題を背負っているのだよ。それじゃぁ、どうすれば少しでもいい世の中にしていくことができるんじゃろうなぁ。それはなぁ、お前のように泥棒するような「根性」を、世の中を少しで良くするために、その「根性」をいいことに使うことだ。そんな心がけをしていく人が多くなってくれば世の中は変わるのじゃよ。世の中が悪いという前に、お前の心をまず変えて、そっから世の中を批判しろということだ。そうすればだんだんいい世の中になってくるということよ。お前はもう分別のある大人だぞ。子供ではないのだ。もし、お前が子供ならこんなことは言わない。分別のある大人だから言うのだ。今のような誘惑に満ち満ちている世の中を生きていくためには、しっかりとした考え方を持って生きていかないと、すぐに谷底へ転落してしまうのだぞ。しっかりとした考え方を選択するか、それともに誘惑に負けて、どっぷりと歓楽に浸るか、やけか腹いせなどで悪を選択するかは、世の中が選択してくれるものでもないし、親がしてくれるものでもない。お前自身の頭で考えて選択していくしかないのだ。なにもなぁ、歓楽が悪いといっているものではないぞ。ほどほどにということだ。限度をわきまえろということだぞ。権蔵よ、人間は一生己の心の中に住んでいる「善の心」と「悪の心」と闘っていくしかないのだよ。お前の最大の敵はお前の心の中に住んでいるのだ。それとなぁ、人間いったん良いことを考え出すと良い知恵がどんどん出てくるし、悪いことを考え出すと悪知恵がどんどん出てくるものなのだ。そしてなぁ権蔵、お前の両親は、お前をさい銭泥棒にするために一生懸命に育てたわけではないぞ。それなりの人間になってもらおうと思って育ててきたはずだ。お前はそんな親心を無にしようというのか。きっと今頃草葉の陰でお前の両親は泣いているぞ。私が今言ったこれらのことは分かるよなぁ、権蔵!!」と語気を荒げて言いました。

これを聞いていた権蔵は、不思議と今までの突っ張りは消え、なんと涙を流して泣いているではありませんか。そして涙声で「お地蔵様、自分のことを棚に上げて、ひとのせいにしていた俺が間違っていたてねぇ。今やっと分かりました。死んだ親にあわせる顔がねぇてねぇ。これからは心を入れ替えて働くっけぇ、今までのことは勘弁してくっねぇろっかのー」と言いました。するとお地蔵様は「やっと分かってくれたか。お前が本当に心からそう思っているなら、今までの罪は水に流してもいい。しかし、ただ口だけでそういっているのならば、勘弁できないぞ」と言いました。それを聞いていた権蔵は「お地蔵様、俺は本当に自分が馬鹿だったと、今分かったてねぇ。これからは本当に心を入れ替えてがんばっれぃ。嘘は言わねっけぇ」と言いました。するとお地蔵様は「そうか、そこまで言うなら、お前を信じることにする。人間は何かあったとき、そのつど心から反省して心を入れ替え、やり直して生きていくならば、どんなことがあっても窮することはないぞ。自分が悪かったと、心から反省し、新しく生まれ変わろうとする人間を天は見捨てたりしないものだぞ。これからがんばるんだよ」と権蔵を励まして目を閉じ、それっきり何も話しませんでした。権蔵は狐につままれたような気分で、このお地蔵様とのやりとりを感じていました。ほんのいっときの出来事だったのです。なにか夢か幻を見ているようでした。権蔵はゆっくりと立って、さい銭箱から離れ、お地蔵様に手を合わせて「お地蔵様、ありがてぇかったれぃ」と一言お礼を言って、ゆっくりとその場を離れました。

 そしてこのことがあってから数日後に権蔵は「まごころ地蔵」での出来事を一生胸に収め、誰にも話すまい、と決意しました。人に話しても信じてもらえるとは思わなかったのです。せいぜい、頭が変になったと言われるのがおちだ、と思ったのです。そんな決意をしてからというもの、権蔵は人が変わったようになりました。いままで、さい銭箱から盗んで貯めておいた金は、恵まれない人達に全部くれてやりました。そしてどんなきつい仕事でも汗水流し一生懸命働きました。そして、実家に帰っていたお千代と子供たちを呼びよせ、今までのことを心の底から謝りました。そして一緒に長屋で住むことにし、これからは汗水流して働くことを約束しました。それからというもの権蔵は我を忘れて働きました。そしてその後、胴元の親分のところに代官所の手入れがあり、親分と助蔵一味はすべてお縄になりました。権蔵もとばっちりをうけましたが、騙されただけということで、百叩きの罰を受けただけで釈放されました。そして胴元の親分に取られていた店と家は権蔵に返されました。権蔵は運よく又、呉服屋としてやり直すことができました。それ以来権蔵はまごころ地蔵との出会いに感謝し、年に一回「まごころ地蔵」へのお礼参りを欠かすことはありませんでした。そして家族ともども本当の幸せを見つけたとさ。         おしまい