偽装等の不正を防止するためには管理体制やチェック体制等の強化が必要ですが、最も根本的なものとは一体何でしょうか?

 昔々、ある地方に大工になろうと考えていた宗兵衛という若者がおったとさ。宗兵衛はどこの大工の棟梁のところで修行をするか悩んでいたとさ。宗兵衛が住んでいる地方には大工の棟梁は2人おったとさ。一人は「仏の善三」という棟梁、もう一人は「鬼の仙蔵」という棟梁だったとさ。「仏の善三」のところは大工になろうと考えている若者には人気があったとさ。逆に仙蔵のところはまったく人気がなく、みんなに嫌われていたとさ。仙蔵の教え方は「鬼の仙蔵」と言われているくらいなので、それは、それは厳しかったとさ。おっかなくて、おっかなくて、入門した若者たちはほとんど三日も、もたなかったとさ。少しでも間違えば「馬鹿やろう!!お前は大工に向いていない。さっさと辞めろ!!」と言う始末だったとさ。これにはみんな参ってしまって「こんな棟梁のところにはいられない」と考えて、みんなすぐに辞めていったとさ。しかし、仙蔵の大工としての腕はこの地方では、筋金入りのぴか一だったとさ。宗兵衛はどっちにするか悩みに悩んでいたとさ。親は「仏の善三」のところがいいと助言していたとさ。しかし、宗兵衛はへそ曲がりのところがあって、みんながいいというところは好きではなかったとさ。そんな性格の宗兵衛は最終的に「鬼の仙蔵」のところに入門することに決めたとさ。決めたとたん親は「あの棟梁のところには、お前は三日も、もたないよ」と宗兵衛に言ったとさ。

 そんなことまで言われて入門してみた宗兵衛でしたが、噂どおり、それは、それは厳しくおっかなかったとさ。「宗兵衛は親が言うのも無理はない」と思ったとさ。仙蔵は無駄口ひとつたたかず、ほめたり、おだてたりすることもなく、ただただ、もくもくと仕事をする棟梁だったとさ。宗兵衛は教えてもらったとおりに仕事をしているつもりでも新米なのですぐに間違ってしまったとさ。案の定、すぐに雷が飛んできたとさ。宗兵衛は「これではみんなが辞めていくのは当たり前だ!」と心の中で思ったとさ。さすがの宗兵衛も毎日毎日怒られてばっかりいたので、こんな棟梁のところには、いられないと考えるようになっていったとさ。挙句の果てに憎しみの心もおきてきたとさ。しかし「怒られるのは俺が間違っているからだ。俺がまだ、未熟だからだ」と考え直して歯を食いしばってがんばったとさ。がんばっているうちに棟梁に向けられていた憎しみは徐々になくなっていったとさ。

そんな棟梁のところに修行して、はや10年がたったある日、鬼の仙蔵が宗兵衛に「宗兵衛よ、よくがんばったなぁ。こんな俺のところはみんなすぐに逃げていくよ。俺はなぁ、入門してくる若者の品定めをしていたのよ。ほんとうにやる気があるかどうかためしていたのよ。この商売、なまはんかな根性では一人前にはなれない。家というものは手抜きしようと思えばいくらでもできるものだ。施主の見えないところはいくらでもごまかせる。しかし、こんな根性ではいい大工にはなれない。自分に厳しい人間にならないといい仕事はできないのだ。北国の木は冬の厳しい風雪に耐えてしっかりと根をはり、木の材質もしっかりしている。人間も同じなんだよ。本当にやる気があればどんなことにも耐えられるもんだよ。耐えれば北国の木のように中身もしっかりして、根もしっかり張るもんだ。本当にやる気があるかどうかが問題なんだよ。俺が鬼のように怒っていたのは、その人間の本当の根性を見極めるためだったのさ。この世の中、偽者が多いんだよ。人間というものは、なんでも自分のことは棚にあげて、人のせいにしたがるもんだ。自分の都合のいいような巧妙な言い訳を考えるのさ。あそこの棟梁がこんな人間だから、俺は辞めるとかさ。まあ、こっちのほうが楽だからなぁ。宗兵衛よ、人生は楽な道を選択してはいけないよ。楽な道は何も考えないから最後に得るものはたいしたことはない。苦しい道に耐えてがんばれば何とかしようと思って、普通では考えられない知恵も出てきて、結果的に得るものが多い。とにかく問題にぶつかったらどうしたら解決できるのかを考えることが大事なのさ。俺は今までの経験からそう思うんだ」と言ったとさ。10年たって初めて宗兵衛は棟梁からほめてもらったとさ。宗兵衛は、棟梁がまさかこんなことを言うとは思ってもいなかったので、ただただ、びっくりしてしまったとさ。このとき初めて棟梁の「鬼の心も本当の愛だった」と分かったとさ。こんなことを宗兵衛に言った鬼の仙蔵は、翌日に心蔵が止まり急死してしまったとさ。最後に宗兵衛に言った言葉が、宗兵衛に対する遺言になってしまったとさ。

 それからというもの宗兵衛の心に仙蔵の心が乗り移ったかのようになり、宗兵衛は最後に言い残した棟梁の言葉を心に刻み、もくもくと仕事をして大工としての腕を上げていったとさ。そして宗兵衛も後に棟梁になり、仙蔵と同じくおっかない鬼の心を持った棟梁になったとさ。入門してきた若者が少しでも仕事を間違えば「馬鹿やろう!!お前は大工に向いていない。さっさと辞めろ!!」と怒鳴っていたとさ。世間からは宗兵衛も死んだ棟梁と同じく「鬼の宗兵衛」と言われるようになったとさ。宗兵衛もこの地方で、腕はぴか一の棟梁になり、人々から信用され、どんどん仕事が入ってきて繁盛していったとさ。           おしまい