時は地球世紀21世紀の、西暦2006年。地球から9000億兆光年離れている、神界の精霊党党首であり、神界総理でもあるウルトラエンゼル総理神のところに、天の川銀河の中心に配置してある「神界宇宙問題発見探査衛星(略してSUMHTE))から、重大な問題が報告されました。それは、地球の日本という国に自殺が多発しているという、報告だったのです。せっかく授かった大切な「命」を自ら葬ってしまう、という問題だったのです。その報告を受けたウルトラエンゼル総理神は、この問題は、見逃すことのできない重大問題として受け止め、早速、神界閣議を開き、対応措置を検討することになりました。
人生の中で一番大切なことは「命をつなぐ」ことです ウルトラエンゼル総理神は、まず、アタマイーダ官房長官神に「何か自殺を防ぐいい知恵はないのか。」と、切り出したのです。アタマイーダ官房長官神は「うーん。なかなか難しい問題ですね。自分で自分の命を絶つ。ここまで追い詰められてしまうというのは、日本にいったい、何が起きているのでしょうかねぇ。実態が分からないと、手の打ちようがないなぁ。」と、言いました。総理神は「官房長官神、そんなのんきなことを言っていられる場合ではないぞ。詳しい報告書によると、日本年号平成10年から平成18年までの連続9年間、毎年自殺者数が3万人を超えていると言うことだ。これはもはや異常事態というほかないぞ。一年間に人口3万人の町が毎年毎年消えていると同じことだ。これは世界最高水準のレベルだ。たしか、日本は、世界でも有数の工業生産をほこる大国、という報告も受けている。経済的には恵まれているはずなのに、なぜ自殺する人が多いんだ。このところがよく分からない。しかし、何とかしなければならないのは確かだ。」と、言いました。これに対してアタマイーダ官房長官神は「うーん。総理神、昔、陸の神様と海の神様が喧嘩(No11陸の神様と海の神様の地球分捕り合戦参照)しているときに仲介して解決したように、総理神自ら、日本に行って解決したらどうでしょうか。」と、言ってきたのです。すると総理神は「そうしたいのだが、公務の予定がびっしりで動けない状態だ。何かいい考えはないか。」と、言いました。それを聞いていた「カイケツスルーダ神界いじめ問題特命大臣神」は「総理神、私に考えがあります。たしか、日本の越後に、まごころ地蔵がおったと思うのですが、もしその地蔵がまだ健在ならば、その地蔵に連絡を取り、地蔵から一働きしてもらいましょう。」と、言いました。すると総理神は「それはいい考えだ。早速、ゲンキイーダ文部科学大臣神、今はたしか、越後ではなく、新潟県になっているはずの、まごころ地蔵の所在を確認し、確認され次第、超高性能宇宙神界パソコン(略してTUSP)で宇宙瞬間移動電子メール(略してUSITM)を送信して神界閣議の内容を知らせるように。」と、ゲンキイーダ文部科学大臣神に命じたのです。それを受けたゲンキイーダ文部科学大臣神は「総理神、まごころ地蔵の所在が、もし確認された場合、TUSPをSSUIMで送り、このTUSPとSSUIMをリースします。そして使い方をすぐに理解してもらって、何とか連絡を取ります。」と、返答したのです。総理神は「早速、着手してくれ。」と、言いました。それに基づいてゲンキイーダ文部科学大臣神は、SUMHTEで、まごころ地蔵の所在を確認しました。そして、TUSPをSSUIMで、まごころ地蔵に送ったのです。
まごころ地蔵は、日本の新潟県に健在でした。地蔵の前の道は、舗装され、大型トラックや乗用車などの車がひっきりなしに往来していました。時代はすっかり変わっていました。ただ一つ救いは、時代は変わっても、この村の人達が、このまごころ地蔵を、大切にして守ってきたことでした。まごころ地蔵は神界から急に送られてきたものにびっくりしました(人間には見えない)。しかし、9000億兆光年かなたの神界のウルトラエンゼル総理神の存在は宇宙選挙速報で分かっていました(ウルトラエンゼル総理神の任期は300億年)。早速まごころ地蔵は恐る恐る神界から送られてきたTUSPを開いてみました。開いてみてあまりの複雑さにびっくりしてしまいました。しかし、このTUSPは「瞬間理解キイ」があり、ここをたたくと、すぐに理解できるしろものでした。まごころ地蔵は、すぐにこのキイをたたいて、このTUSPを理解しました。そしてUSITMが届くのを待ちました。そしてすぐに神界のウルトラエンゼル総理神から、USITMが送信されてきたのです。その内容は「拝啓 まごころ地蔵殿 私は神界のウルトラエンゼル総理神です。元気でご健在のこと、心からお喜び申し上げます。急なことで大変申し訳なく思うのですが、緊急事態なので何卒ご理解していただきたくお願い申し上げます。今、あなたがいる日本は、自殺する人が大変多いことがSUMHTEでの報告で分かりました。本来ならば、私が直接地球に行って、問題解決しなければならないところなのですが、重要な公務の予定が入っていて動けません。そこで私に代わり、あなた様にこの問題を取り扱っていただくことが、神界閣議決定されました。具体的な仕事ですが、こちらのSUMHTEで、いろいろ悩んで自殺を考えている人を見つけますので、その人のところへ行って、相談に乗ってほしいのです。できれば自殺をしないように説得してほしいのです。詳しいその人の住所はTUSPで送信します。そしてその人のところへは、TUSPと一緒に送ったSSUIMで移動してください。SSUIMは、行きたいところの住所をセットすれば、すぐに行けます。尚、TUSPとSSUIMは本来ならば有料リースですが、今回は特別の事情につき、無料です。最後に、この問題を受けていただけるかどうかのご返答を、すぐにいただけますでしょうか。」と、いうものでした。まごころ地蔵はすぐに「この問題は喜んでお引き受けいたします。」と、いうUSITMをウルトラエンゼル総理神に送信しました。それを受けたウルトラエンゼル総理神は、早速、SUMHTEで報告されてきた、学校でいじめられて自殺を考えている一人の中学生の住所を、地球のまごころ地蔵あてにUSITMで送信しました。
地球のまごころ地蔵は、すぐにそのUSITMを受け取りました。その内容は「まごころ地蔵殿 早速ですが、下記の住所のところに住んでいる中学2年生の男子が、同じクラスの男子数人に、いじめられて自殺を考えています。すぐに行って相談に乗ってください。そして自殺を思いとどめてください。」
[いじめで悩んでいる中学生の詳細]
住所 北海道札幌市学校町3丁目5番10号
世帯主名 大井名矢実さん
お子様名 大井名矢夢くん(中学2年生男子)
と、いう内容でした。すぐに、まごころ地蔵は新潟県からSSUIMで、この住所をセットし、北海道の札幌に移動しました。
案の定、ここに住んでいる中学生の大井名矢夢くんが、悶々と悩んでいました。まごころ地蔵は小さい声で「名矢夢くん、名矢夢くん、私はまごころ地蔵だ。いま、いじめられていることは分かっている。君の抱えている問題の相談に乗るために、新潟県からやってきた。この地蔵に心を開いて何でも話してみないか。」と、言いました。すると名矢夢くんは驚いた様子で「まごころ地蔵様、何で僕が悩んでいることが分かったのですか。」と、地蔵に聞いてきました。地蔵は「実は信じられないかもしれないが、この地球から、9000億兆光年離れている、ウルトラエンゼル神という神界の神様が、この天の川銀河の中心に配置してあるSUMHTE、という衛星で、君がいじめで悩んでいることを発見して、私に連絡してきたのだ。そこで君のところに来たってわけだ。」と、言いました。すると名矢夢くんは「まごころ地蔵様、9000億兆光年離れていれば、光の速さ(一秒間で地球を7周半できる秒速30万km)で行っても9000億兆年、という気が遠くなる時間がかかるのに、何でそんなに簡単に連絡が取れるのですか。」と、中学生らしく科学的に質問してきたのです。まごころ地蔵は「確かに君の言うとおりだ。しかし、神の世界は、科学では分からない物凄いものがあるのだよ。この途方もない宇宙空間を瞬時に移動したり、連絡したりできるマシーンがあるのだよ。」と、言って聞かせました。名矢夢くんは信じられない様子でしたが、すぐに「まあいいや。この宇宙には人間の常識では理解できないことがあると思うよ。で、まごころ地蔵様、本当に僕の相談に乗ってくれるのですか。」と、言いました。まごころ地蔵は「そうだ。何でも相談にのるよ。気軽に話をしよう。」と、言いました。そしてすかさず「名矢夢くん、何で君はいじめられているの。」と、質問したのです。それに対して名矢夢くんは「僕は背が低いので、同じクラスの数人が、ちび、ちび、と、言って馬鹿にするんだ。僕はもう耐えられないよ。」と、言ったのです。まごころ地蔵は「そうだったのか。ひどいことを言うものだ。人の身体的に劣っているところを責めて、いじめるとは、とんでもないやつらだ。最低なやつらだなぁ。それで先生に相談したのかい。」と、言いました。すると名矢夢くんは「相談したんだけど、真剣に聞いてくれないんだ。せいぜい、気にしないように、というくらいなんだ。僕が死ぬほど悩んでいるのに。」と、言ってきたのです。地蔵は「そうか。学校の先生は、君の悩みを軽く考えているんだなぁ。困ったものだ。これだけいじめが社会的問題となっているときなのに、これではだめだなぁ。ところで、こんなことで命を粗末にしたらだめだよ。君は命ということを真剣に考えたことはあるの? 今、君が命をここで落としてしまうとお母さん、お父さんを、悲しみのどん底に落とすことになるのだよ。まだ、14歳じゃないか、まだまだ先は長いよ。考え方によっては、今こんな問題で悩んでいることは、君の人間としての成長のためには、絶好のチャンスかもしれないよ。いじめている人間より、君はきっと人間的に早く成長できるよ。人間はいろいろ悩んで成長するものなんだよ。君が大人になったとき、中学生のときに、いろいろ悩んだことが、精神的な免疫力となって、君のためになると思うよ。人間生きていくときには、様々な問題が待ち受けているのだよ。そして、その問題を解決していかなければならないんだよ。君は14歳で、初めて「いじめ」という問題にぶつかったことになる。この問題は君の考え方一つで解決できるよ。」と、言いました。それを聞いていた名矢夢くんは「何となく分かったみたいだけど、まごころ地蔵様も、僕が本当に苦しんでいることが分かっていないよ。学校に行けば、毎日毎日、針のむしろだよ。つらいんだ。いじめられてから、女子の見る目も変わってきたように思えるし。何だか、みんなが僕の背が低いことを馬鹿にしているように思えてくるんだ。」と、言いました。すると地蔵は「そうか。それはつらいことだなぁ。地蔵も何だか分かるような気がしてきたよ。一番感受性があるときでもあるしなぁ。しかしなぁ、名矢夢くん、背が低いことが、そんなに人間として恥ずかしいことであり、悪いことかなぁ。地蔵はそうは思わないよ。むしろ、そんなことで、いじめている人間のほうが、恥ずかしいことであり、悪いことだ、と思うよ。まったく逆だよ。すべてのいじめは、いじめられているほうは、何にも悪くないのだよ。悪いのは、いじめているほうだよ。だから、本当ならば、君が萎縮し、気に病むことは、ないんだよ。そうだろう。そして、まだ中学生であり、まだまだ成長期だ。今いじめている生徒より、大きくなる可能性が十二分にあるしね。仮に大きくならなくても、何の問題もないよ。だって人間みんな違うところを持って生まれてくるのだから。みんな同じく生まれてきたらこの世の中、気持ち悪いと思わないかい。この機会にこんなことを考えてみないか。」と、言いました。そしてつづけて「名矢夢くん、明日学校へ行って、みんなが、ちび、ちび、と言ってきたら、ちびのどこが悪いんだ!! 文句あっか!! と、勇気を持って言ってごらん。人間、あんまりおとなしいと、なめられることもあるんだよ。人が何か言ってきたら、場合によっては反論することも大事なことだよ。反論は自分の殻を破ることにもなるしね。このいじめは、君の殻を破る絶好のチャンスという言い方もできるよ。人間、問題にぶつかって、自分の殻を破って成長していくのじゃぁないのかなぁ。逆に自分の殻の中に閉じこもってはだめじゃないのかなぁ。自分の考えをしっかりと相手に伝えることは大事なことだよ。自分をもっと出していいんだよ。相手とそこで摩擦が起きるかもしれない。しかし、それは避けて通れないことだよ。長い人生、場合によっては本音でぶつからなければならない局面もあるんだよ。そんなことを少しでも分かってほしいんだ。地蔵は全面的に君の味方だ。安心して、いじめている人間に、俺は、ちび、だけど何か文句あっか!! と、言ってごらん。この一言で状況は一変するよ。人間、喧嘩するぐらいの気概を持って、相手と闘わなければならないときもあるんだよ。今がそのときだと思うんだ。」と、言いました。それを聞いていた名矢夢くんは「喧嘩してもいいんですか、まごころ地蔵様。暴力はいけない、いけないと親からも言われています。」と、言ってきたのです。地蔵はすぐに「暴力による喧嘩はいけないよ。気持ちだけは、喧嘩してもいいという思いで臨んでごらん、ということなんだ。相手もびっくりするからね。人を簡単にいじめる人間は、以外と気が小さい人間が多いもので、その人も何か悩みや問題を抱えているものだよ。喧嘩するくらいの気持ちでぶつかっていけば、本当の友達になれるかもしれないよ。」と、言いました。すると名矢夢くんは「本当に僕の味方ですね。」と、言いました。地蔵は「あたりまえじゃないか。味方だから遠いところからやってきたんだよ。」と、返答しました。その一言で安心したのか、名矢夢くんは「まごころ地蔵様、少しは分かったような気がします。僕は何だか自分の殻の中に閉じこもっていたみたいです。そのために悶々として死ぬことを考えていたような気がします。そんなことを、まごころ地蔵様のお話で分ったような気が、だんだんしてきました。明日学校に行って、僕をいじめるやつがいたら勇気を持って、俺は、ちびだけど、何か文句あっか!! と、言ってみます。」と、言ったのです。そしてすぐに地蔵は「そうそう。その勇気が大切だ。少しは分かってもらえたみたいだね。もし、そう言っても、なんら解決しなければ、また私に相談してもらいたいよ。ところで問題が解決するまで、私を名矢夢くんの家に泊めてもらえるだろうか。」と、言ったのです。名矢夢くんは「いいです。きょうは僕と一緒に寝ましょう。」と、言ってくれました。そしてまごころ地蔵は、名矢夢くんと一緒に寝たのでした。名矢夢くんは、悩んでいたときの深刻な様子は、すっかりと消えて、ぐっすりと眠ることができました。
そして夜が明けました。名矢夢くんは元気よく学校へ行きました。学校の休み時間に、いつもいじめている学友の井地目矢郎が、いつものように名矢夢くんに「ちび、ちび、よくきょう学校に来たな! ちびのくせに大きな顔をするんじゃないよ!」と、言ってきたのです。すかさず名矢夢くんは、地蔵が言ったことを思い出して「俺はちびだけど、何か文句あっか!! お前はただ人をいじめて喜んでいる最低の人間だ。このことに関して何か文句あっか!!」と、周りの生徒に聞こえる大きな声で、勇気を持って反論したのです。初めてこんなことを言われた井地目矢郎は、いつもの名矢夢と違う態度にびっくりした様子で「いやいや、なんでもない。俺が悪かった。」と、すんなり謝ったのです。名矢夢くんは心の中で「もしこれで喧嘩になったら喧嘩してやろう。」と、思って臨んだのでした。その迫力で井地目矢郎は、すっかりいじめる気がなくなってしまったのでした。これを見ていたクラスの女子は、手をたたいて名矢夢くんの、この勇気ある行動をたたえてくれました。ある女子は「名矢夢くんって勇気あるー。見直したわ。わたし好きになっちゃった。」と、言いました。名矢夢くんの勇気あるこの一言が、状況を一変させたのです。そしてこのことはすぐにクラスに広まって、名矢夢くんをいじめる人はいなくなりました。そして名矢夢くんは、学級委員に選ばれました。そして「もし、人をいじめるやつがいたら、俺が許さんぞ!!」と、言って、クラスの人気者になりました。名矢夢くんは「ほんのちょっとした勇気がいじめをなくすのだ」と、いうことに気が付いたのでした。そして正しいことを正しいと、正々堂々と主張していくことは、いじめている人間をのさばらしておかない方法だ、と気付いたのでした。
まごころ地蔵は、名矢夢くんの家にだいぶお世話になったのですが、問題解決したことを見届けて、またもとの新潟県の自分の家に帰りました。そして、そのことをウルトラエンゼル総理神に、TUSPでUSITMを送信しました。その報告を受けたウルトラエンゼル総理神は「よかった。よかった。これで一件落着だなぁ。しかし、まだまだ、まごころ地蔵には、働いてもらわないといかんなぁ。」と、言ったのでした。それというのも、SUMHTEから続々と問題が報告されていたのです。 おしまい
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